草津市議会議員 宇野ふさ子
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議会の記録
市議会報告 平成25年2月定例会 意見書第四号
共産党からの意見書に賛成の立場で登壇しました。市民派クラブと共産党の賛成で少数で否決となりました。

旧日本軍「慰安婦」問題に対して、日本政府の誠実な対応を求める意見書

 戦後67年過ぎた今も、戦争被害は直接の被害者だけではなくその子孫も親世代も傷つき癒されてはいません。旧日本軍「慰安婦」問題はその象徴的な被害であり、この問題について、被害女性からの謝罪と補償を求める訴えが続けられています。

 1993年(平5)河野洋平官房長官(当時)の「お詫びと反省の気持ちを申し上げる」といういわゆる「河野談話」が発表されました。1997年98年(平9・10)に開かれた国連の会議等では我が国の取り組みを「前向きの措置「歓迎すべき努力と」一定評価はされていますが、2007年(平19年)7月にはアメリカ下院において「日本軍が女性を強制的に性奴隷にした」ことを日本が公式に認め謝罪するように日本政府に求める決議が採択されました。

 その後、カナダ、オランダ、EU議会でも採択され、2008年(平20年)には、フィリピン、韓国、台湾、などでも、それぞれ日本政府に対し、責任を認め、公的に謝罪する事などを求める決議が採択されています。

 人間の尊厳を著しく傷つけられた被害女性たちは高齢になり、一日も早い誠実な対応を求められています。募金によるアジア女性基金や、総理の手紙の対応では、被害者は誠意ある対応としては納得されていない事実があります。

 日本政府は旧日本軍「慰安婦」問題被害者の声に耳を傾け、早急に以下のような誠実な対応をされるよう強く要請します。

1.「河野談話」を見直すことは行わず、「慰安婦」問題の更なる真相究明、被害者の人間の尊厳回復に努め、誠実な対応を図ること。

2.「慰安婦」問題の歴史を踏まえ、繰り返さないようあらゆる方法を通じて次世代に事実を伝えるよう努めること。

 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出します。

衆議員議長  殿
参議院議長 殿
内閣総理大臣 殿 あて

草津市議会議長

宇野 私は以前に、いわゆる「慰安婦」問題を取り上げた意見書を提案しようとしましたが、そのときはこれから勉強をしたいというご意見があり、当時は差し控えました。
以来、3年半経過しましたので、皆さんはすでにご承知のことと思いますが、改めて、当時の自民党宮沢内閣の河野内閣官房長官が出した「河野談話」とはそもそもどういうものだったのか、確認するところから討論に入ります。
(この討論は会派の討論でなく私個人の討論内容で述べています。)
「河野談話」とは、当時の自民党政府が正式な調査を行い出されたもので、思いつきで出したものではなく「慰安婦関係調査結果発表に関する河野内閣官房長官談話」です。
その内容は、慰安所は、当時の軍当局の要請により設営されたものであり、慰安所の設置、管理及び慰安婦の移送については、旧日本軍が直接あるいは間接にこれに関与した。慰安婦の募集については、軍の要請を受けた業者が主としてこれに当たったが、その場合も、甘言(相手の気をさそう甘い言葉)、強圧による等、本人たちの意思に反して集められた事例が数多くあり、更に、官憲(役人官史)等が直接これに加担したこともあったことが明らかになった。また、慰安所における生活は、強制的な状況の下での痛ましいものであった。
というものです。後に述べます中曽根回顧録に出てきます。
特に、この談話では、「慰安婦」といわれる女性に対して、強制的なものだったかが問題とされますが、河野さんはその後のインタビューで自分の談話の説明をし、その中で、強制があったと認めた理由を、
1 慰安婦が慰安所で行動の自由がない、
2 逃亡不可能な状態であったことや、
3 元慰安婦からのヒアリングで本当に過酷な扱いを受けた当事者でなければ出てこない言葉がどんどん出てきたことをあげている。
4 また強制連行の証拠となる書類が出てこなかった事には、そうしたものは組織の性格から作成されないだろう、つまり命令書の中に強制連行しろとは書かないだろうという趣旨のことを述べています。
特に元「慰安婦」の皆さんから聞き取りをし、その言葉に真実性を見出していることは重要で、今日のいじめやセクハラや差別などと同様で、被害者に向き合うこと、そこに真実を見出そうとする姿勢が、人権を大切にしようとする姿勢だと思います。
そのような意味で、この河野談話を見直そうとする動きは、人権を軽んじるものにつながると考えるところです。むしろ、もしも河野談話に不十分なところがあれば、それを補い、いまだ政府として、なんら対応もしていないことなどについて、どうするべきかを議論することが、極めて急務なことだと考えます。
つまり、元「慰安婦」の皆さんは、当時15歳くらいの少女から20歳を超えていた人は今では、80歳90歳の年齢になり、毎年次々と亡くなっていっておられます。
そのことは、私たちの側、また政府の側に、この問題に誠実に対応するために残された時間がないことを表しているのです。
さて、2年前の2011年11月1日のある新聞報道では
(人権センターの人権通信で朝日新聞の記事が掲載されており、議員には全員配布の内容でした。)
中曽根康弘元首相が旧海軍の主計中尉のころ、ボルネオのバリクパパンという現在のインドネシアで慰安所の設置に関与したことを示す旧海軍の資料を、高知市の市民団体が入手し、発表したとあります。
資料によると、部隊はダバオに上陸した翌1942年にバリクパパンで飛行場の整備などに従事。その際、「(隊員の)気荒くなり、日本人同志けんか等起る様になる」などとして、「主計長の取計(とりはからい)で土人女(当時の言葉です)を集め慰安所を開設 気持の緩和に非常に効果ありたり」と書かれ、慰安所の場所を示す地図もあった。
さらに、中曽根氏は1978年に自ら回顧録を寄稿していて、当時を振り返り、「三千人からの大部隊だ。やがて、原住民の女を襲うものやバクチにふけるものも出てきた。そんなかれらのために、私は苦心して、慰安所をつくってやった」と記しているのです。
これにより、中曽根氏が現地の女性を集めて慰安所を設置するよう計らったこと明らかであり、軍の関与を示す重要な資料です。
戦争は人を狂わせます。だからといって、戦争中なのだから仕方がないというものではありません。戦争中の日本軍の行なった事実を否定するならこれは21世紀の私たちの名誉をも著しく損なうものです。
それは日本という国が、女性の人権を自覚しない国であることをさらけ出すことにつながるのではないでしょうか。
「本人の意に相反して女性がいやいや業者に売りわたされ、その業者に身柄を拘束された女性」というのは「性奴隷」以外の何物でもありません。「男性の相手をさせられた」ということは「強姦」と同様です。
つまり「事実上の人身売買であった性奴隷が、軍隊と一緒に連れて行かれる形で行われていた」という過去の日本軍・日本人の非人道的行為には、現代に生きる者として厳しく批判をすべきところです。
 いわゆる「慰安婦」問題を日本軍性奴隷の問題であり、その行為は女性の人権の尊重を踏みにじったものであることを、誠実に述べることで初めて、世界の目は日本の姿勢を真正面から受け止めて、聞く耳を持つということになるのではないでしょうか。
強制連行がなかったという姿勢は、戦前戦後も日本が一向に変わることもなく同じであるといっているようなものです。
仮に強制連行がなかったと訂正が出来たとしても、名誉回復でもないものです。
嫌がる女性を相手にしたこの非人道的行為の売春を是とする訂正をすることになりませんか。
「河野談話」の取り扱いを誤った場合、現在の日本そのものが「女性の人権の敵」として、国はもちろん国民もそのように見られるでしょう。今こそ冷静な判断をお願いいたしたいのです。
人は誰しも過去を変えることはできません、他者をも変えられませんが、この人権問題としての「慰安婦」問題の史実を直視して聞くこと・学ぶことによって、これからの社会を考える必要があり、特に私たち政治にたずさわるものは、これを政争の具にしてはならないということが求められます。
ところで、ドイツにおいて、1985年の5月8日、日本の終戦記念日8月15日にあたる日に、当時ドイツのヴァイツゼッカー大統領が敗戦40周年のこの日、ドイツ連邦議会で行なった格調高い有名な演説をご紹介します。
「罪の有無、老幼(子どもから高齢者まで)いずれを問わず、われわれ全員が過去を引き受けねばなりません。だれもが過去からの帰結に関わり合っており、過去に対する責任を負わされております。
心に刻みつづけることが なぜかくも重要なのかを理解するために、老幼(全員)たがいに助け合わねばなりません。また助け合えるのであります。
問題は過去を克服することではありません。さようなことができるわけはありません。後になって過去を変えたり、起こらなかったことにするわけにはまいりません。しかし過去に目を閉ざす者は結局のところ現在にも盲目となります。非人間的な行為を心に刻もうとしない者は、またそうした危険に陥りやすいのです。」
この言葉を皆さんもしっかりと心に刻んでいただきいと思います。

さて、「慰安婦」問題の事実がなかったことのように、学校の教科書の記述からこの問題を削除することで世界各国から批判の声が上がるなど、世界中でこの問題の真の解決のための運動が広がりを見せていますが、日本では必ずしも十分な報道がされていません。
このことを直視し、民間の研究や、歴史教育など、あらゆる方法を通じて記憶にとどめおき、伝え、後世に生きるものは十分に認識する必要があると思います。
慰安婦問題に触れないで史実を隠蔽しておこうという姿勢をとるならば、それは日本軍が戦争犯罪者を裁く裁判の前に、公文書の証拠隠滅を図った姿勢と似ています。
なおざりにはできない人権にかかる問題です。
被害者は、社会的な差別の中で、さらに非難する声におびやかされつつも、これまで耐えて、まさに二次被害を受けながら生きてこられました。勇気を持って事実を訴えられているこの方たちに、まだ誹謗中傷を浴びせることは、二次加害者となっているところです。
改めて申します。人間の尊厳を著しく傷つけられた被害女性たちは高齢になり、一日も早い誠実な対応を求められています。
日本国民も、日本国も、その人権意識の高さが問われているときです。
また、草津市は、男女共同参画推進条例をわが議会で可決し制定しています。
その市議会が女性に関わる問題にどう対応するか、市民をはじめ多くの方々が注目しております。
草津市が一歩前に出られるか私たち議員の人権意識が注視されている時でもあります。
これまで全世界で、台湾議会、韓国議会、EU議会、カナダ下院議会、オランダ下院議会、米下院議会などが、それぞれ「慰安婦」問題に対する日本の対応などについて決議しています。
また国内においても、党派を超えてこの問題を人権問題としてとらえ、人権意識の高い約40の地方議会がこの意見書採択をしています。周りから人権に対する取り組みや意識が高いと見られていると自負するわが草津市も一日も早く、それらの議会の仲間入りを果たすべきです。
草津市議会が、今回意見書を採択して発信することが、「ゆたかな草津 人権と平和を守る都市」宣言をして、25年経つ草津市議会の責務でもあると考えます。
改めて恒久平和への願いの実現と、どこまでも人間の尊厳に取り組むためのひとつの誓いとして、この「旧日本軍「慰安婦」問題に対して、日本政府の誠実な対応を求める意見書案」の採択にご理解をたまりわりますようお願いします。

 

草津市議会議員 宇野 房子 [住所] 滋賀県草津市矢倉1−2−45
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